大地(だいち)は数々の経験をしてきて、自分の価値観に合わないからといって、軽々しく批判をすべきではないと気づいていた。批判する以前に、まずは、敬意を払うべきなのだ。
敬意なしに、批判するのは非難と同じだし、存在を認めないことでもある。批判するのは簡単だが、そこには相手を殺す毒が隠されていることを知るべきでもある。
「ぼくだって、ミサちゃんがベッドシーンを撮るのが初めてで不安だってことはわかっているんだよ。君を責めるつもりはない。とにかく、ぼくはいい映画を撮りたいんだ」
「すみません、監督。わたし、迷惑ばっかりかけちゃって」
「ベッドシーンが恐いんだったら、これからぼくと練習してみようか。いやだったら、明日、ぶっつけ本番でもいいんだけどね」
襖越しに聞いていて、大地ははらわたが煮えくり返るくらいの怒りを覚えた。なんという破廉恥な監督だ。
(いい映画を撮りたいだって? 冗談じゃない。映画をダシにして、自分の性欲を満足させたいだけじゃないか)
大地は襖に手をかけた。彼女を危機から救うために、いつでも開けて出られるように体勢をつくった。
〈この物語は〉
伊豆・修善寺に暮らす貧しい父母のもとで生まれ育った高校生、山神大地。
中学三年生のとき、美しい英語教師と触れ合ったところから、彼は女性の心と体を巡る、長い長い旅を歩きはじめる。
同級生、アルバイト先で出会った旅館の若女将、高校の先輩、先輩のお母さん……。時には豊かな心を持った女性と、またある時には欲望をぶつけるだけを考える女性と出会いながら——。
『週刊現代』での連載で大反響を呼んだ神崎京介の青春官能大河ロマン『女薫の旅』が、今再び始まる!
中学三年生のとき、美しい英語教師と触れ合ったところから、彼は女性の心と体を巡る、長い長い旅を歩きはじめる。
同級生、アルバイト先で出会った旅館の若女将、高校の先輩、先輩のお母さん……。時には豊かな心を持った女性と、またある時には欲望をぶつけるだけを考える女性と出会いながら——。
『週刊現代』での連載で大反響を呼んだ神崎京介の青春官能大河ロマン『女薫の旅』が、今再び始まる!


